現心うつつごころ)” の例文
美作は酔漢のそれかのように、現心うつつごころもないように、依然として抜き身を下げたままで、ヒョロヒョロ、ヒョロヒョロと歩いて来る。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
めては父母兄弟けいてい余所よそながらの暇乞いとまごいもなすべかりしになど、様々の思いにふけりて、睡るとにはあらぬ現心うつつごころに、何か騒がしき物音を感じぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
死顔でも見たい、もう一度逢いたい。と現心うつつごころにいいければ、察し遣りて泰助が、彼の心を激まさんと
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四辺あたり燦爛さんらんたる黄金白銀こがねしろがねの落葉の秋の景色でしたから、この目覚しさに、自分のしたことながら、自分のしたことに目を覚して、そのおびただしい金銀の落葉に眩惑し、現心うつつごころ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)