ひきい)” の例文
それがまるでほかの紙屑をひきいるように、一しきり風が動いたと思うと、まっさきにひらりと舞上ります。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
法浴の後の一物にも染まない浄身をひきいて、再び人間に生れ戻るが宜い。お前が今、再びこの世に眼を開く時、さし出ずる慧日は必ずやお前に新なるものを見せるであろう。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
正月は二日目の雪をひきい注連飾しめかざりの都を白くした。降りやんだ屋根の色がもとにかえる前、夫婦は亜鉛張トタンばりひさしすべり落ちる雪の音に幾遍か驚ろかされた。夜半よなかにはどさと云う響がことにはなはだしかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)