独者ひとりもの)” の例文
俺は独者ひとりものだし、の、それだけの事で、ほかにゃあやも何にもありゃしねえんだから、お前も旅の者らしくさっぱりしてくんねえな。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
いつも鑵詰かんづめばかり買うのみならず、シャツや上着もボタンの取れたのを着ているのを見て、女はいよいよわたくしをアパート住いの独者ひとりものと推定したのである。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
クリスマスの晩だのに、そんな風に一人ですわっているところを見ると、まるで男の独者ひとりもののようね。
プロホルは一体妙な男で、平生詞数ことばかずを言はず、年を取つても独者ひとりもので暮し、誰とも交際しない。
る山奥の村に、八太郎はちたらうといふ独者ひとりものがゐました。呑気のんきな男で、皆のやうに一生懸命に働いてお金をためることなんか、知りもしないし考へもしないで、のらくらとその日その日を送つてゐました。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)