特種とくだね)” の例文
発明発見、その他科学者の業績に関する記事の特種とくだねは、たった一日経過しただけで、新聞記事としての価値を喪失するという事実がある。
ジャーナリズム雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
高野氏宛の郵便から『朝日』に特種とくだねとなって、漸く現われた次第で、所謂いわゆるスピード時代の今日から見ると、今昔の感がある。
「……これは特種とくだねだ。すばらしい、特種だぞ。いや、恐るべき大事件だ。前代未聞の怪事件だ……」
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「さうです。よく知つてゐます。そんなものぢやないのです。僕の欲しいのは特種とくだねなんです。」
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
ところが、町のずつと上手にある町役場では、すぐ近くのバスの発着所からいの一番に配達されるし、又県庁からの示達があるので、いろんな特種とくだねが入つた。今泉は早耳好きだつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
ね、新聞社だって田舎だから、モスコウの出来事なんかまだ何も知りゃしないんだし、モスコウの騒動を今見て来たというように話せば、特種とくだね料が貰えるでしょう。そこを父が狙ったの。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
京極三太郎は編集長の云いつけで、錦小路にしきこうじという、曾ての公卿くげ華族を訪ねました。その家の有名なお嬢さんが、映画界に入るという早耳の噂を聴いて、訪問記事の特種とくだねを取るためだったのです。
それはとにかく、現代日本の新聞の社会面記事として、こういうのは珍しい科学的な特種とくだねである。
破片 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「さう/\、第一番の特種とくだねを忘れてゐたぞ。ひとつ即刻にも会見を申し込まなくつちや!」
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「うん。学者なんてものは、おかしなものさ。だが——」と彼は起き直って「あれがほんとに十萬メートルの上空で採取さいしゅしたもので、火星の生物の毛ででもあったら、こいつは素晴らしい新聞の特種とくだねだ。よオし、こいつはもうけ仕事だ。オイ、ワーニャ、お前すぐ編集次長のカメネフを ...
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)