版木はんぎ)” の例文
一方の日本左衛門とても、月何回と版木はんぎにかかッて出る定刊本のように妾宅しょうたくへ顔を出して、おほんと言っている旦那でもありません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木材としては、目がつんでいるので、とりわけ版木はんぎよろこばれ、好んで彫師ほりしがこれに刀をあてた。家具にしたとて膚艶はだつやがいい。
樺細工の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
……版木はんぎだけは本でかくしても、膝の木くずはごまかせない。あなたが御法度ごはっと大黒尊像だいこくそんぞうを版木で起していたことは、さっきからちゃんと見ぬいているんです。
その翌日ナルタンという寺へ参ってその寺の一番宝物であるところの版木はんぎを拝見しました。その版木はチベット一切蔵経いっさいぞうきょうの版木で一切蔵経はチベットで仏部、祖師部に分れて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
版木はんぎ版摺はんずりの職人を雇うにも、またその製本の紙を買入るゝにも、すべて書林の引受けで、その高いも安いも云うがまゝにして、大本おおもとの著訳者は当合扶持あてがいぶちを授けられるとうのが年来の習慣である。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
普通の辞書にはあかめがしわに梓字を当てて、版木はんぎに使われるとある。上梓じょうしとか梓行とかいうのはそれであろうか。そして見ればむこうでいう梓はあかめがしわかとも思われる。牧野さんはまたいう。
鉄眼は、人も知る通り、一生涯のうちに、大蔵経だいぞうきょう版木はんぎを完成して、後世の文化に伝えようという悲願を立てた僧である。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各寺秘蔵の版木 その版木はんぎは寺々に別々に在るんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
版木はんぎを焼き捨ててしまうべきものだ。なぜならば、林道春のはいには、わが神国の真のすがたが観えていない。かれらの眼に実物以上、大きく観えているのは、幕府のみである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)