片唾かたづ)” の例文
一人も答へなかつた。片唾かたづを呑んだやうな教室の沈默は、先生の額の靜脈に注入してくる血液の流れを聞き分けられさうに澄みきつてゐた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
座にあるものは思はず片唾かたづを飮んで、平手打ちでも喰はされたやうに後ろに靡きたぢろいだ。一人として彼女からコップを奪はうとするものはなかつた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
一同何を言ひ出すのかと片唾かたづをのんだ。常から笑ふ事の少い眇目かための教師の顔は、此の日殊更苦々しく見えた。そして語り出したのは次のやうな事であつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たゞもうハラハラとして片唾かたづを呑むばかりであつた。
夜の奇蹟 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
み込みし片唾かたづおとか、接吻せつぷんの熱きねがひか。
さてこそ、と、わたくし片唾かたづんだ。