爽涼そうりょう)” の例文
でも見渡す限りのこの不破の古関のあとの、庭にも、やぶにも、畠にも、爽涼そうりょうたる初秋の気がちて、悪気の揺ぐ影は少しもありません。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
湯あがりの爽涼そうりょうな肌に、衣服もえて、客の官兵衛はよみがえったように、遠慮なく日ごろよりよく飲み、またよく語った。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は愛という単一神を信じたく内心つとめていたのであるが、それでもお医者の善玉悪玉の説を聞くと、うっとうしい胸のうちが、一味爽涼そうりょうを覚えるのだ。
満願 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それでも幾分か日射しが弱くなり、ほのかながら爽涼そうりょうの気が流れている中に、何処どこからか木犀もくせいにおいが漂うて来たりして、さすがにこの辺にも秋の忍び寄ったことが感じられる。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
月はまだ五月初旬の爽涼そうりょう、若者の心そのままな薫風くんぷうたもとを打つ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城下の蒸し暑い夜も、この山上の本丸は、爽涼そうりょうだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爽涼そうりょうな秋が訪れはじめたある日の早暁である。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五月の爽涼そうりょうだ、夜明けも早い。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)