父爺おやじ)” の例文
勿論、淫魔いんまを駆って風紀を振粛し、且つ国民の遊惰ゆうだを喝破する事業じゃから、父爺おやじも黙諾の形じゃで、手下は自在に動くよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
案内の父爺おやじに聞けば「これが赤川の大滝です。この辺は年に一回とも人が来ませんから、こんな大滝でも知ってる人は、山林局の御役人様位でがんす」
父爺おやじの家主は、棄てた楊枝ようじを惜しそうに、チョッと歯ぜせりをしながら、あとを探して、時々つば吐く。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし……鯰の伝……それならば死んだ父爺おやじが御恩になった深川の勝山さんへ出入をするから、彼家あすこへ行って、旦那様にお頼み申して、伝にいい聞かしておもらい申して
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父爺おやじの総六が吩咐いいつけのまま、手織縞の筒袖に、その雪のような西洋前垂、せなへ十字に綾取あやどって、小さく結んだ菊模様の友染唐縮緬ゆうぜんとうちりめんの帯お太鼓に、腰へさばいた緑の下げ髪、すそ短こうふッくりと
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)