あつさ)” の例文
やがて蒸々とする恐ろしい夏のあつさがやって来た。伊勢崎屋の入口に近い壁を背にして、頭を後方うしろの冷たい壁土に押宛てながら、捨吉は死んだように腰掛けた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此比又冷気多く候処、今日よりあつさつよく候。いかなる気候に候や。生来不覚位の事也。先冬あたたかに雪なく、夏涼しくて雷なく、凌ぎよき年也。ことに豊年也。世の中も此通ならば旨き物也。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こらえがたいあつさに蒸されて皆な死んだようにごろごろしている。魚のように口を開いて眠っているものがある。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)