焚口たきぐち)” の例文
それから、ね上がる。寝台の鉄具かなぐにぶつかる。椅子いすにぶつかる。暖炉だんろにぶつかる。そこで彼は、勢いよく焚口たきぐちの仕切り戸をける。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
誰も彼も石のように黙っている、懲役人のようにむっつりとして重苦しく焜炉こんろ焚口たきぐちのぞいたり屑灰をき出したりしている、絶対に沈黙の労働なのだ
蛮人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
風呂の焚口たきぐちの所に行くと、造作に使つた木材の余りがそのまゝになつてゐるのを思ひ出して焚きつけの分と燃料用の太いのとを撰り分けて置くと云つた案配である。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
鎔鉱炉ようこうろ平炉へいろから流れ出すドロドロの鉄の火の滝。ベセマー炉から中空なかぞらに吹上げる火のと、高熱瓦斯ガスの大光焔。入れ代り立代り開く大汽鑵ボイラー焚口たきぐち。移動する白熱の大鉄塊。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私が湯をつかっていると、焚口たきぐちの処から息子さんが湯加減を訊いた。主人の猟の連れは日本人で、この家の出入りの職人かなにからしく、主人に対して下手な口をきいていた。
遁走 (新字新仮名) / 小山清(著)
蒸炉むしろ焚口たきぐち櫨滓はぜかすを放りこんだり、蝋油の固まったのを鉢からおこしたり、干場一面の真っ白な蝋粉に杉葉で打水をしたりする男衆や女衆にまじって、覚束おぼつかない手伝いをするのも
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
裏で、桶風呂の焚口たきぐちをいぶしていた母のおしげは、ふり向いて
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内部は二重の板張りで、貝を焼くかまどが三基並んでい、おのおの貝殻を投げ入れる口と、焼きあげて出来た石灰をき出す口と、それらの下に、薪を燃やす大きな焚口たきぐちが付いていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
内部は二重の板張りで、貝を焼くかまどが三基並んでい、おのおの貝殻を投げ入れる口と、焼きあげて出来た石灰をき出す口と、それらの下に、薪を燃やす大きな焚口たきぐちが付いていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)