炬火かがりび)” の例文
草叢くさむらにいる蛍の灯はまるで真木島まきしま炬火かがりびではないかと思われるばかりに沢山谷間に輝いていて私の淋しい心を慰めてくれるし
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
杉の木立ちのあいだに、ものものしい竹の矢来やらいを結びめぐらし、出口入口には炎々えんえんたる炬火かがりびが夜空の星をこがしています。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
よるしょくって遊宴中、腰掛けをつらねた上に数猴一列となって各の手に炬火かがりびを捧げ、客の去るまで身動きもせず、けだし盗人の昼寝で当て込みの存するあり
つまり天下の政治を云為うんいする結社が区々たる知事風情ふぜいの恩義をこうむるなぞいう事は面白くないという気持であったらしいが、対岸の福岡市では時ならぬ海上の炬火かがりびを望んで相当騒いだらしい。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今こそ、無産階級意識が、大炬火かがりびの如く燦々と輝やき出したのであった。
十姉妹 (新字新仮名) / 山本勝治(著)
の高らかな声に、人々は手に手に炬火かがりびを持って駆けよってきた。恐るおそる眺めると、見たこともない異形の化物である。頭は猿、胴は狸、尾は蛇であり、四つ足は虎の如く、鳴く声はぬえに似ていた。
人を見真似にかまどに火を絶やさず炬火かがりびを扱う位の役に立つらしい。