潮入しおい)” の例文
橋杭はしぐいももうせて——潮入しおいりの小川の、なだらかにのんびりと薄墨色うすずみいろして、瀬は愚か、流れるほどは揺れもしないのに、水に映る影は弱って、さかさまに宿るあしの葉とともに蹌踉よろよろする。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飾り付けも立派でございまして、庭からずうと見渡すと、潮入しおいりの泉水せんすいになって、模様を取って土橋どばしかゝり、紅白の萩其のの秋草が盛りで、何とも云えんい景色でございます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕はしばらく月のうつった池の上を眺めていた。池は海草かいそうの流れているのを見ると、潮入しおいりになっているらしかった。そのうちに僕はすぐ目の前にさざ波のきらきら立っているのを見つけた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)