渦潮うずしお)” の例文
いつか阿波をのがれてきた夜、あの黒い渦潮うずしおに舟をグルグルグルグル廻されたまま、何としても出られなかった時と同じような気持である。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
エドガア・アラン・ポオにあの名高いメエルスツルムの渦潮うずしおの恐ろしい記述がある。いわば海も船もあんな状態であるが、今ここに挙げる心像にはいささかの危険も伴わないのである。
あおい海づらに逆まく渦潮うずしおのあいだにただよう弓だの矢だの檜扇ひおうぎだのはかまだのがいたましくまぶたに映ってくるのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは明け方に鳴門の渦潮うずしおを見物する者と称して、土佐泊へ上陸あがったが、そこから忽然こつぜんと影をかくしていた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この本軍は、ここ福良ふくらを発して、鳴門なると渦潮うずしおを渡り、阿波あわの土佐どまりに、足場を取る作戦と見えた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふりかえってみれば、剣山のけん、岡崎の船関、鳴門の渦潮うずしお——、よくも、ここまで戻ってこられたものと、いまさら、自身さえ不思議な心地がして、お綱はそこの中二階にいるのであった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)