深邃しんすい)” の例文
氏は実に世にも得難き碩学せきがくの士でひろく百科の学に精通し、それがまた通り一遍の知識でなくことごとく皆深邃しんすいの域に達していられた。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ビェリンスキーやドブロリューボフを祖述する二葉亭の文学論は当時の女学生の耳には(恐らくは今の女学生にも)余りに高遠深邃しんすいであって
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
鬼石の町から坂原を越え、万場ばんばへ出て中里村、上野村へ入れば、次第に山の景観は深邃しんすいを加え、渓の魚も濃い。
水の遍路 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
奥手は一面、無限と思われるほど、深邃しんすいなる孟宗竹林、その中を通って、左の方へ小路が続いている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
私がここにいう二つの誤解の第一のものは、哲学をたいへんに高遠で深邃しんすいなことと考えて、かような哲学をちょっとでもかじることを非常に偉大なことと心得て思いあがる人々に属するものである。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
あの学問で深邃しんすいに領略するのだね。
誰にも碌々ろくろく読まれず、ほとんど注意されずに終ったが、今から三十年前にこういう深邃しんすいな美学論が飜訳されたというは恐らく今の若い人たちの思掛けない事であろう。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)