泥絵具どろえのぐ)” の例文
旧字:泥繪具
身幅みはばの狭いのは職人だといってダブダブした着物ばかり着ていた。或時は無地物むじもの泥絵具どろえのぐでやたらしまいたのを着ていた。
「江戸名物、女軽業大一座おんなかるわざおおいちざ」——本堂の屋根よりも高く幕張まくばりをした小屋。泥絵具どろえのぐで描いた看板の強い色彩。
油絵師の誰かが泥絵具どろえのぐで天使とカリスを書いたかなり美しいもので、このような四郎の附属品から見ても、彼の日用品は決してバラック的ではなかったに相違ない。
安吾史譚:01 天草四郎 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
手づくねのごく単純な土偶でくを素焼きにし、それへ荒く泥絵具どろえのぐを塗っただけのものである。
日本婦道記:二十三年 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
愈々いよいよ昨日はおろかなり玉の上に泥絵具どろえのぐ彩りしと何が何やら独り後悔慚愧ざんきして、聖書の中へ山水天狗楽書やまみずてんぐらくがきしたる児童が日曜の朝字消護謨じけしゴムに気をあせるごとく、周章狼狽ろうばい一生懸命とうは手を離れず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
額には歌舞伎かぶき芝居の御殿の背景みたいに、いくつもの部屋を打抜いて、極度の遠近法で、青畳あおだたみ格子天井こうしてんじょうが遙か向うの方まで続いている様な光景が、あいを主とした泥絵具どろえのぐで毒々しく塗りつけてあった。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
周囲を杉の皮で張って泥絵具どろえのぐで枝を描き、畳のすみに三日月形の穴を開け、下からかすかに光線を取って昼なお暗き大森林をしのばしめる趣向で、これを天狗部屋と称していた。