法筵ほうえん)” の例文
「短い一日では、到底、小止観の真髄しんずいまで、お話はできかねる。きょうは、法筵ほうえんを閉じて、また明日あす、究めたいと思います」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十二月二十四日は枕山が父竹渓の十七年忌に当るので、梅痴上人は枕山のために竹渓父子の知人を増上寺の学寮に招いで盛大なる法筵ほうえんを営んだ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
親しく帝王の師となり、法筵ほうえんの時は、後白河法皇よりさえ上席を譲られていました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
知音ちいん法筵ほうえんに列するためであつた。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山内の修復を勧進かんじんしましょう、塔を寄進いたそう、を塗ろう、瑤珞ようらくを飾ろう、法筵ほうえんにはあたうかぎり人をよび、後では世話人たちで田楽を舞おう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老いたる父母、今からは親のない幼き者たち、乳飲ちのみを抱いている白き面の妻、その甥、その叔父、その姪など、無数の縁者を、きょうの法筵ほうえんに見た。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、いちど行ってみろ」禿谷かむろだにの講堂は、一日ごとに大衆でうずまった。法筵ほうえんにすわれない人々は講堂の縁だの窓の外に立って彼の声だけを聞いていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)