泊瀬はつせ)” の例文
「明日香風」というのは、明日香の地を吹く風の意で、泊瀬はつせ風、佐保さほ風、伊香保いかほ風等の例があり、上代日本語の一特色を示している。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「これはお言葉とも思えませぬ。吉野、泊瀬はつせの桜花を歌人が居ながらにして知っていると同じく、敵の立てこもる城の背後は、剛の武者ならば知っております」
それは泊瀬はつせ即ち上古の葬所のあつたところであり、それが轉訛して「をばすて」となり、それへ古代の信濃でも行はれたらしい棄老の傳説が結びつきながら、丁度
姨捨記 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
……(朗読)隠口こもりく泊瀬はつせの国に、さよばひにが来れば、たなぐもり雪は降り来ぬ、さぐもり雨は降り来ぬ、つ鳥きぎすはとよむ、家つ鳥かひも鳴く、さ夜は明けこの夜は明けぬ
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
此の石榴市といふは、二一六泊瀬はつせの寺ちかき所なりき。二一七仏の御中には泊瀬なんあらたなる事を、唐土もろこしまでも聞えたるとて、都より辺鄙ゐなかよりまうづる人の、春はことに多かりけり。
隱國こもりく四三 泊瀬はつせの山四四
人麿が土形娘子ひじかたのおとめ泊瀬はつせ山に火葬した時詠んだのに、「隠口こもりくの泊瀬の山の山のにいさよふ雲は妹にかもあらむ」(巻三・四二八)とあるのは、当時まだ珍しかった
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
反歌。隠口こもりく泊瀬はつせ小国をぐにに妻しあれば、石は履めども、なほぞ来にける。隠口の泊瀬小国に妻しあれば、石は履めども、なほぞ来にける。……わかるかい? ね、実に単純に歌ひ放してあるぢやないか。
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
隱國こもりくの 泊瀬はつせの川の
長谷はつせは今の磯城郡初瀬はせ町を中心とする地、泊瀬はつせ五百槻ゆつき五百槻いおつきのことで、沢山の枝あるけやきのことである。そこで、一首の意は、長谷はつせ(泊瀬)の、槻の木の茂った下に隠して置いた妻。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
隠口こもりく泊瀬はつせの国に
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)