沿)” の例文
お庄は自分の部屋の縁側から、ばしばし雨滴あまだれのおちる廂際ひさしぎわ沿いて、庭の木戸から門までそれを持ち出さなければならなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
温泉宿から梓川に沿いて、河童橋を渡り、徳本とくごうの小舎まで来た、飛騨から牛を牽いて、信州へ山越しにゆく牧場稼ぎの人たちが、行き暮れて泊まるところだ。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
これから出て、流に沿いて、田圃たんぼの方を。私だ知らんけれども、余程景色が好いさう。御一所にと云ふのだが、大分跡程みちが有るから、貴方あなたは御迷惑でありませう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
茶店をつて、従是これより小川温泉道と書いた、傍示ぐい沿いて参りまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜になると、この筋の根に、一本一本神経が入って大手を振って、のさり、のさり、谷の中を歩きそうだ。川に沿いて、両側に森がある。森には、もみや樺の類が茂っている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
川に沿いて行く、この国特有の信濃撫子なでしこ(実は甲州にもある)が、真紅に咲いている、河原に咲くことが多いので、河原撫子と、土地の人はいうようだ、森と川の間に、一筋道が通じている
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
川に沿いて、一、二丁も溯り、正東まひがしの沢へと入る、石の谷というよりも、不規則に、石を積みかさねた階段ステージである、石からは水が声を立てて落ちている、石の窪みには澄んだ水がたたえている、その上に
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)