河童頭かっぱあたま)” の例文
弟の和助も兄たちについて東京の方へ勉強に行かれることを何よりのよろこびにして、お河童頭かっぱあたまを振りながら勇んで踏み出すという子供だ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大きく叫んだまま、彼の眼はなにものかに吸いつけられ、河童頭かっぱあたまの毛はそそけ立って、じーっと、くりみたいに、五体をかたくすくめてしまった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
座席の上に横坐りして絹靴下のあしのうらを広く一般に公開し、荷物棚から真田紐さなだひもでつるした一個二フランの貸し枕に河童頭かっぱあたまをもたらせ、すやすやと熟睡する相好は
イートン・クロップのお河童頭かっぱあたまがよく似合う子だった。前髪が、切長きれながすずしい眼とスレスレのところまでれていた。なによりも可愛いのは、その、発育しきらないようなあごだった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
河童頭かっぱあたまの、妙齢としのころ十八九歳ばかりとも見える Made in Japan のお嬢さんが坐っていて、御者の唄う歌に調あわせて手拍子を打っているのである。
すると、群れのあいだから、河童頭かっぱあたまのおそろしく背の短い男が出てきて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叱呼しっこしながら、シャルムウズの袖をまくり、河童頭かっぱあたまを一振り振って勢い立ったる有様は、さながらシノンの野におけるジャンヌ・ダルクのごとく意気沖天のおもむきがあった。
するとそこへ、河童頭かっぱあたま侏儒こびとに似た小男が駈けてきて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この河童頭かっぱあたまの令嬢が一念発起して画道の修業に取りかかるため来村いたしたこと、この小屋は正当な手続きを踏んで、長期の契約で周旋屋から借り入れたこと、その契約書はここにあること