河原蓬かわらよもぎ)” の例文
同時に彼も何となく口がにくい気もちになって、しばらくは入日いりひの光に煙った河原蓬かわらよもぎの中へたたずみながら、艶々つやつやと水をかぶっている黒馬の毛並けなみを眺めていた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
久しぶりの血腥ちなまぐさい騒ぎに、ひまな公卿の牛車までが見物に来た。そしてその柳のすぐ下に、もう十年の昔となって、河原蓬かわらよもぎにつつまれている平治の乱の首塚にも目をとめた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
河原蓬かわらよもぎの露に濡れながら、摩利信乃法師まりしのほうしの住む小屋を目がけて、うかがいよることになったのでございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その途端に、またも側の河原蓬かわらよもぎの中へどさりと上から落ちて来たものがあった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでやはり河原蓬かわらよもぎの中を流れて行く水のおもてを眺めたまま、息もつかずに上の容子へ気をくばって居りました。が、平太夫は今までの元気に引き換えて、容易に口を開きません。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
千曲ちくまの板橋を渡るとすぐに、日当りのいい河原蓬かわらよもぎへ腰をおろすと
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふだんから釣の好きな私の甥は、五条の橋の下へ参りまして、河原蓬かわらよもぎの中に腰を下しながら、ここばかりは涼風すずかぜの通うのを幸と、水嵩みかさの減った川に糸を下して、しきりはえを釣って居りました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)