河中かわなか)” の例文
河中かわなかに碇泊している帆前船を見物して、こわい顔した船長から椰子やしの実を沢山貰って帰って来た事がある。
春泥はきっと、六郎氏が小梅の碁友達の家を辞して、帰途きと吾妻橋を通りかかった折、彼を汽船発着所の暗がりへ連れ込み、そこで兇行を演じ、死体を河中かわなかへ投棄したものに相違ない。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
温泉は川岸から湧出わきだしまして、石垣で積上げてある所を惣湯そうゆと申しますが、追々ひらけて、当今は河中かわなかの湯、河下かわしもの湯、儘根まゝねの湯、しもの湯、南岸みなみぎしの湯、川原かわらの湯、薬師やくしの湯と七湯しちとうに分れて
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大江戸にてはこの土地のように、他郷の者に河中かわなかの髪洗いを見られたとて、不吉な事のあるなんど、その様ないい伝えは御座らぬ。その土地へそなたが行けば、立派に縁談が纏まるのじゃ。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
河中かわなかに岩石突兀とっこつとして橋を架ける便宜よすがが無いのと、水勢が極めて急激で橋台きょうだいを突き崩してしまうのとで、少しく広い山河やまがわには一種のかごを懸けて、旅人はの両岸に通ずる大綱おおづな手繰たぐりながら
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
河中かわなかで蛙が読むやせんどうか 重頼
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)