ぐつ)” の例文
ゴムぐつがぎい/\鳴る。咳払の音がする。それからいつもの落ち着いた、平気な、少々不遠慮な声で、かう云ふのが聞えた。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
毛皮外套をても、ゴムぐつを穿いても余り長く外に立つてはゐられない。せぎ合つてゐる人の体のぬくもりは、互に暖めはしないで、却て気分を悪くする。
防火栓 (新字旧仮名) / ゲオルヒ・ヒルシュフェルド(著)
と、やがて、声をひそめて浮き上った彼女の典雅な支那ぐつが、指先に銀色の栗鼠りすの刺繍を曲げながら慄えて来た。ふと、参木は思わぬ危険区劃に侵入している自分に気がついた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
つたじ、岩にすがり、一歩一歩登りつめて、以前の青石のところへ戻って来てみると、はて、どうしたのか? 老母の破れぐつと杖はあったが、老母の姿はどこにも見えないではないか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)