水郷すいごう)” の例文
山東は済州さいしゅうこうに臨んだ水郷すいごうで、まわり八百里の芦荻ろてきのなかにとりでをむすぶ三人の男がいます。——頭目かしら王倫おうりんといい、その下には宋万そうまん杜選とせんと申して、いずれも傑物。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水郷すいごうの貞時の家、そしてきらびやかな正月のうたげも、筒井が去っては催物もよおしものの数々が控えられたことであろう、しんせつな父君、ひたいの若い貞時に永い三年を待たせたことなど
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
わたくしの頽廃した健康と、日々の雑務とは、その十余年、重ねてこの水郷すいごうに遊ぶことを妨げていたが、昭和改元の後、五年の冬さえまた早く尽きようとするころであった。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あたしは芝で生れて神田かんだで育って、綾瀬あやせ隅田川すみだがわ上流)の水郷すいごうに、父と住んでいたことがある。あたしの十二の時、桜のさかりに大火事に焼かれて、それでうちは没落しはじめたのです。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
大盗の巣窟そうくつ梁山泊りょうざんぱくなどの水郷すいごうもあって、旅途はさびれ、土民の気風も荒く、そのうえ日々聞ゆる兇悪な犯行にさえ、従来、官の実績は何もあがらず、官は無力なものと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでにその日は、山東梁山泊りょうざんぱくの近くかと思われる水郷すいごう地帯へはいっていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)