気落きおち)” の例文
旧字:氣落
と、むっくり起きたが、その酒樽の軽いのに、本性たがわず気落きおちがして、右の、倒れたものでござりますよ。はい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
豆の粉を水で溶いて日々の糧にするむかしの境界にたちかえったことで、二人は気落きおちして病人のようになり、またぞろ寝框へ入ったきり動かなくなってしまった。
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ひどく子煩悩こぼんのうほうだものですから、あのピアノのことなんか申しますと、もうとても生きてはいないだろうと気落きおちをしてしまいまして、まるで病人の様になって
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それならば片輪女には亭主がないと云うものでも有るまい、何様なびっこでもてんぼうでもみんな亭主を持って居ります、えゝ火傷したくらいで気落きおちして、おまんまも喫べられないなんて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ガッカリと気落きおちして、魂がぬけたようにトボトボと帰って来た、……その鼻さきへ桐箱に入ったお氷。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
堂の前で気落きおちした、……どこだか知らないが、谷中の辺で、杉の樹の高い処から鳥が落ちて死んだ、というのを聞いた時、……何の鳥とも、照吉は、それまでは見なかったんだそうだけれども
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)