気臆きおく)” の例文
旧字:氣臆
来客らいかくの目覚しさ、それにもこれにも、気臆きおくれがして、思わず花壇の前に立留まると、うなじからつまさきまで、の葉も遮らずかっとして日光した。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……然しそれは気臆きおくれがしたのではない。楽殿の舞台でつぎつぎに披露される鼓くらべは、まだどの一つも彼女をおそれさせるほどのものがなかった。彼女の勝は確実である。
鼓くらべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
笑いながら、戯言じょうだんにまぎらしてこう言ったのを他の者も軽くきいていたが、臆病と言ったのは本当の気臆きおくれをさして言ったのではなくって、死にはぐれてはならない臆病だったのだ。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)