毛髪もうはつ)” の例文
旧字:毛髮
人間だって血液けつえきの赤い色と毛髪もうはつの色などをとりのぞけば、からだじゅうが無色むしょく透明とうめいになってしまうんだ。ガラスとたいしてちがわないよ
紀昌は根気よく、毛髪もうはつの先にぶら下った有吻類ゆうふんるい催痒性さいようせいの小節足動物を見続けた。その虱も何十匹となく取換とりかえられて行くうちに、早くも三年の月日が流れた。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
あの銀色の毛髪もうはつをして、何となく子供子供した顔をしていた方だけは、今でも私の眼にはっきりとうかんでくるけれど、もう一方のはどうしても思い出せない。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
よく気をつけてみると、毛髪もうはつの下の皮膚が、うすく襞状ひだじょうになっているのが見えないこともないが、それが見えたとて、誰もそれを傷痕きずあとと思う者がないであろう。じつにおどろくべき手術の進歩だ。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
されば物凄ものすごい相貌の変り方について種々奇怪きかいなる噂が立ち毛髪もうはつ剥落はくらくして左半分が禿げ頭になっていたと云うような風聞も根のない臆説おくせつとのみはいし去るわけには行かない佐助はそれ以来失明したから見ずに済んだでもあろうけれども
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)