武尊ほたか)” の例文
ここに利根川水源地というのは、大略西は宝川笠ヶ岳の支脈と、東は武尊ほたか山の支脈とに依りて限られた利根川上流の地域を指したものである。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
この付近、南の空に大赤城の聳立しょうりつするあり、東には奥白根、西には武尊ほたか、北にひうち岳を控えて雲の行きかいに、うたた山旅の情をくものがある。
雪代山女魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
其うねりの低まったのが一度隆起して西山となり、再びおおいに隆起して忽ち波がしらの砕けたように五、六の峰尖を乱立させているのが武尊ほたか山だ。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
尖った山は、武尊ほたか岳だ。子持山と、小野子山をつなぐ樽の上に、丸い白い頭をだして下界を覗いているのは、谷川岳である。その隣の三角山は、茂倉岳だ。
利根の尺鮎 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
赤城山の東には、根張りの大きい武尊ほたか山がほとんど全容を露している、信州の穂高山と同じ神が祭ってある所から察すると、何か其間に因縁があるらしい。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
雪の武尊ほたか山の谷間から流れ出る発知川と川場川を合わせる薄根川、谷川岳の南麓に源を発して法師温泉を過ぎ
冬の鰍 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
赤城の左の肩には、利根郡の中央に蟠踞する雪の武尊ほたか山が、さむざむとした姿をのぞかせている。仏法僧で名高い武尊の前山の、迦葉山は、いずれの突起か。
わが童心 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
村から見られる山は東京には及びませんがなり多数で、男体、皇海すかい袈裟丸けさまる武尊ほたかを始め小野子、子持、榛名、浅間、妙義、荒船、御荷鉾みかぼ、秩父連山等は言うに及ばず
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
北方には榛名山、上越国境の谷川岳、武尊ほたか山、赤城山。東北には遠く奥日光の男体山が雪を着て高く聳えるなど、まことに景勝の地を石坂家の邸は占めていた。
岩魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
東には遠く利根川水源地の山々が膚はもやと溶け合って、雪だけが白くぼかし残されている、割合に近い武尊ほたか山は、砕けた波頭を全身に浴びた巨鯨に似ているともいえよう。
三国山と苗場山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
武尊ほたか山の峭壁に住んでいた野猿を猟師から買い受け、その唇を味噌煮にこしらえて食べたことがあるが、軽い土臭と酸味を持っていて口では言い表わせぬ魔味を感じたのであった。
たぬき汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
又山の最高点若しくは頂上の一峰を剣ヶ峰と呼んでいる例は、富士山、御岳、乗鞍岳、上野の武尊ほたか山、其他お多いのであるが、これは山の一部分に限られた称呼で比較にはならない。
越中劒岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
武尊ほたか山の峭壁しょうへきに住んでゐた野猿を猟師から買ひ受け、その唇を味噌煮にこしらへて食べたことがあるが、軽い土臭と酸味を持つてゐて、口では言ひ現せぬ魔味を感じたのであつた。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
わが上州では、赤城山の裏側に当たる奥利根の、武尊ほたか山の周囲に最も多い。
老狸伝 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)