權柄けんぺい)” の例文
新字:権柄
などと、少し權柄けんぺいづくになつてゐるのは五十前後の用人らしい男、あとは二人の折助で、店先には死骸を運んで行く駕籠が用意してある樣子です。
勘次かんじ自分じぶん土地とち比較ひかくして茫々ばう/\たるあたりの容子ようすまれた。さうして工夫等こうふら權柄けんぺいにこき使つかはれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大屋の醫者の未亡人の一徹な老婢があたりはゞからぬ無遠慮な權柄けんぺいづくな聲で縫物の催促に呶鳴り込んで來ると、裏の婆さん達は申し合せたやうにぱつたり彈んだ話しを止め
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ガラツ八は妙に權柄けんぺいづくです。それに應へて出て來たのは、先刻平次の家へ來たお茂與、——よくもかう素知らぬ顏が出來たものだと思ふほど、美しく取すまして居ります。
「親分、町人は弱いものでございます。金と權柄けんぺいと、いやがらせと、脅かしと、攻手はいくらでもあります。同じ町内に住んで三千石の殿樣に睨まれちや、動きがとれません」
「そんなことですよ、——でも百姓一がブスブスしてゐるから、宇佐美の養子の直之進が行つて權柄けんぺいづくで脅かしたくらゐぢや納りやしません。この春にはいづれ一と騷動持ち上がることでせう」
そのガラクタの中に、八五郎は僅かの隙間すきまを見付けてしやがみました。と間もなく二階に灯が入つて、下には少し權柄けんぺいづくの人聲、それは、昨夜ゆうべも此處へ訪ねて來た、旗本大野田仁左衞門がたつた一人