権門けんもん)” の例文
旧字:權門
今日は斯う云う権門けんもんだとか、明日はあゝ云う集会があってよんどころなく遅く成りましたら橋場の別荘へ泊りますと、断っては出掛けます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
傲岸唾棄ごうがんだきする態度があったなら、当時の時風で、あれほどな権門けんもんの一族門人が、彼に手を振らして天下を歩かせてく筈はない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより貧窶ひんるれたる身なり、そのかつて得んと望める相愛の情を得てよりは、むしろ心の富を覚えつつ、あわれ世に時めける権門けんもんの令夫人よ、御身おんみが偽善的儀式の愛にあざむかれて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そうなった暁には、もうどんなに自分の渾名に小細工をして高尚らしく見せかけようが、または代書人などの手を通じて古い権門けんもんの家名を賃借しようが、結局なんの役にも立ちはしない。
奥方は今を時めく老中、酒井左衛門尉さかいさえもんのじょうの息女で、一も二もなく権門けんもんの威勢に押されている土佐守は、こんな野蛮で下品で、そのくせ滅法可愛らしい娘を、見たことも想像したこともありません。
権門けんもんの仕事はあじけない。先生は、そう仰っしゃいますが、世上せじょうの絵師は、みなあなた様を、羨望せんぼうの的としております」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まず、少ないでしょう。むしろ神事の祭と対立しているように、堂塔どうとうの大を誇ったり、権門けんもん帰依きえたのんでいるほうが、まず偽らない現実です」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『わかった。売女のように、金や権門けんもんに買われてゆく女だったのか。……ベッ、ベッ、もういい、胸がいた』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「日ごと、そちと共に、大坂城のおふすまを描きには通うておるが……。権門けんもんの壁に生涯のぎょうをそそぐのは、時にふと、味気あじけない気がしないでもないのう」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この学舎がくしゃには、堀河、京極、五条、烏丸などの、権門けんもんの子をはじめ、下は六、七歳から十五、六歳の子弟を預かっていて、民部は今日までずいぶん多くの少年を手にかけてきているが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)