楯岡たておか)” の例文
祖先からの土豪造どごうづくりの家は、羽前の大川たいせん最上もがみの流れに沿い、甑嶽こしきだけふもとにあった。山形から十里余、楯岡たておかとりでから北へ一里、土称どしょう林崎という部落にあった。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楯岡たておかのときと同じだな、と功刀くぬぎ功兵衛は思った。楯岡平助のときと殆んど同じだと、——裏のほうで仔猫こねこのなく声がし、窓外のひさしに枯葉の散りかかる音が聞えた。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
最上もがみのお家を取潰とりつぶしたのも、御先代が怪しい御最期を遂げられたのも、みんな山野辺右衛門やまのべえもん様をはじめ、楯岡たておかなどの仕業に相違ない、お家の潰れるのも構わず公儀に楯をついて
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
坂上主膳さかがみしゅぜんという武士のために、楯岡たておかの藩祖の菩提寺ぼだいじのすこししも手町の辻で斬られたのであった。原因は意趣いしゅ、そのつまびらかな事実は、おまえがもっと大人になれば自然分ってくる。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楯岡たておかとりで町から部落へ来た馬商人あきんどいて来た馬へ、甚助が他の少年たちと共に、悪戯いたずらすると、その中の一人の馬商人が、こぶしを振上げて、逃げおくれた甚助のうしろからこう呶鳴どなった。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)