植半うえはん)” の例文
「こちらが菊人形の元祖、植半うえはんでござい。当年のご覧ものは、中は廻り舞台、三段返し糶上せりあげ。いちいち口上をもってご案内。サア、評判評判」
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
植半うえはんの屋根に止れるとび二羽相対してさながら瓦にて造れるようなるを瓦じゃ鳥じゃと云ううち左なる一羽嘲るがごとく此方こっちを向きたるに皆々どっと笑う。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
当時入谷には「松源まつげん」、根岸に「塩原しおばら」、根津ねづに「紫明館しめいかん」、向島に「植半うえはん」、秋葉に「有馬温泉」などいう温泉宿があって、芸妓げいぎをつれて泊りに行くものもすくなくなかった。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いつかも客に連れられて中の植半うえはんへ行った時、お前、旦那がずッしり重量おもみのある紙入をこれ見よがしに預けるとな、かない気だから、こんな面倒臭いものは打棄うっちゃっちまうよ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おはねさんの車へ相乗りと出かけて。テケレッパだろうじゃアねえか。しかたがねえ泣く子と地頭だ。馬鹿なつらアしておいらアからッ車を曳いて跡から行くと。奥の植半うえはんへいってお昼飯まんまヨ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)