棘々とげ/\)” の例文
道に沿ふて高い石垣をきづき、其の上へ城のやうに白壁の塀を𢌞めぐらした家もあつた。邸風やしきふう忍返しのびがへしが棘々とげ/\長屋門ながやもんの横に突き出てゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
六十といふにしては、ひどい衰弱で、骨と皮ばかり、昔は立派であつたことと思ふ人品も、賤しさと棘々とげ/\しさに、人の眼に不氣味に燒きつきます。
勿論もちろん一寸ちよつとことばはじめにもチがつくが!』と王樣わうさま棘々とげ/\しくまをされました。『れを侮辱ぶじよくするか?え!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
が低くて枝が棘々とげ/\して幹が捩曲ねぢくれて居る日本の樹木よりも、セエヌの河畔に立つ白楊樹は Corot の名畫にもゑがかれた通り如何に優美温和に見えるであらう。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
或る時は室の外に出て行けと命じ、つめたく、棘々とげ/\しい取扱ひをするのは始終しじゆうの事であつた。
内気な、気の弱いおくみは、かうした棘々とげ/\しい言葉から、直ぐ傷けられた。
海の中にて (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
五十と聽きましたが、苦勞をしたせゐか、ひどくけた感じで、慈悲善根を積み、世間の評判も良い人にも拘らず、何んとなくするどさと棘々とげ/\しさと、わざとらしさを感じさせる人柄です。
棘々とげ/\した言葉、白い眼。