梅雨空つゆぞら)” の例文
それはこの喫茶店に、露子という梅雨空つゆぞらの庭の一隅に咲く紫陽花あじさいのように楚々そそたる少女が二人の間に入ってきたからであった。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雨は明くる日も降りつづいて、本式の梅雨空つゆぞらとなった。その日の暮れかかる頃に、善八が先ず顔をみせた。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ふとそのとき、彼は梅雨空つゆぞらに溶け込む夜の濃密な街角から、ひらめく耳環みみわの色を感じた。彼はその一点を見詰めたまま、洞穴を造った人溜ひとだまりの間を魚のように歩き出した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
雨霽あまあがり梅雨空つゆぞらくもつてはゐるが大分だいぶあつい。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うすずみ色の梅雨空つゆぞら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
雨はあがっていたが、梅雨空つゆぞらの雲は重い。彼は、ふところ手をしたまま、ぶらぶらと鋪道ほどうのうえを歩いてゆく。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
世界をおほ梅雨空つゆぞら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)