桐火桶きりひおけ)” の例文
床なる花瓶の花もしぼまず、西向の欞子れんじもとなりし机の上も片づきて、すずりふたちりもおかず、座蒲団ざぶとんを前に敷き、かたわらなる桐火桶きりひおけ烏金しゃくどう火箸ひばしを添えて、と見ればなかに炭火もけつ。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さも旅疲たびづかれさま見えて、鼠地ねずみじの縮緬に、麻の葉鹿の子の下着の端、なまめかしきまでひざななめに、三枚襲さんまいがさね着痩きやせのした、撫肩なでがたの右を落して、前なる桐火桶きりひおけの縁に、ひきつけた火箸ひばしに手をかけ
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と友禅の座蒲団ざぶとんを直して、桐火桶きりひおけ推出おしだしたまい
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)