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桐火桶
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きりひおけ
床なる花瓶の花も
萎まず、西向の
欞子の
下なりし机の上も片づきて、
硯の
蓋に
塵もおかず、
座蒲団を前に敷き、
傍なる
桐火桶に
烏金の
火箸を添えて、と見ればなかに炭火も
活けつ。
さも
旅疲の
状見えて、
鼠地の縮緬に、麻の葉
鹿の子の下着の端、
媚かしきまで
膝を
斜に、
三枚襲で
着痩せのした、
撫肩の右を落して、前なる
桐火桶の縁に、
引つけた
火箸に手をかけ
と友禅の
座蒲団を直して、
桐火桶を
推出したまい