からたち)” の例文
仮を弄して真を成す、世おのづから其の事多く、橘を植ゑてからたちに変ずる、土之をして然らしむるなり。二語共に佳、悦ぶ可し。
東西伊呂波短歌評釈 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
手探りでからたちの門を潜ると、家の中は真暗で、台所の三和土たたきの上には、七輪の炭火だけが目玉のように明るく燃えていた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
苦参くじんという草を床の下へ敷いて寝るか、からたちの葉を抱いて寝るとのみよけになるということにまで源内談義が及びかけた時——不意に、今までヒッソリしていた隣り座敷で
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
退いてその私を省みれば、なるほど自由主義は自由主義に相違なかるべしといえどもわが邦一種特別の自由主義にして、いわゆる江南のたちばなもこれを江北に移せばからたちとなるがごとく
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
先頃からそれがしもつらつら思うに、枳棘叢中ききょくそうちゅう鸞鳳らんほうむ所に非ず——と昔からいいます。いばらからたちのようなトゲの木の中には良いとりは自然栖んでいない——というのです。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人は云ふ ほう からたちむと
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)