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林樾
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こずえ
地は隈無く箒目の波を描きて、
斑に
葩の白く散れる上に
林樾を洩るゝ日影濃く淡く
文をなしたる、
幾ど友禅模様の巧みを尽して
紙漉橋の袂に鉄砲垣を折り
回して、
生節の冠木を見越しの
雑裁の
林樾を深く(中略)春は塀外の桜、庭も
狭に散り込みて、打延る両岸の枝頭の色は大曲の
垠まで一目に
残余無く
池は
玉もて張りたらんやうに白く湿める水の
面に、静に魚の
溌ぬる聞こえて、
瀲灔と石燈籠の火の解くるも
清々し。塀を隔てて江戸川
縁の花の
林樾は
一刷に淡く、向河岸行く辻占売の声
幽かなり