東山道とうさんどう)” の例文
東山道とうさんどうとも言い、木曾街道六十九つぎとも言った駅路の一部がここだ。この道は東は板橋いたばしを経て江戸に続き、西は大津おおつを経て京都にまで続いて行っている。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その頃、赤城あかぎ山の裾から遠くない阿蘇あそしょう田沼に、東山道とうさんどう駅路うまやじを扼して、たちとりでをかまえ、はるかに、坂東の野にあがる戦塵を、冷ややかに見ていた老土豪がある。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天皇はついで大毘古命おおひこのみこと北陸道ほくろくどうへ、その子の建沼河別命たけぬかわわけのみこと東山道とうさんどうへ、そのほか強い人を方々へおつかわしになって、ご命令に従わない、多くの悪者どもをご征伐になりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
市九郎とお弓は、江戸を逐電してから、東海道はわざと避けて、人目を忍びながら、東山道とうさんどうを上方へと志した。市九郎は、主殺しの罪から、絶えず良心の苛責を受けていた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
京都にあるみかどの妹君、和宮内親王かずのみやないしんのうが時の将軍(徳川家茂いえもち)へ御降嫁とあって、東山道とうさんどう御通行の触れ書が到来したのは、村ではこの大火後の取り込みの最中であった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)