来島くるしま)” の例文
旧字:來島
鋭い弦月が現われて、一本の帆柱へ懸かった頃、すなわち夜も明方の事、副将来島くるしま十平太は、二、三の部下を従えて胴の間から甲板かんぱんへ出た。
その中には屋島もあれば、小豆島せうどしまもあり、来島くるしまの瀬戸もあつた。ちよつと上陸すれば、金比羅こんぴらの長い長い石段もあつた。
女の温泉 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
よく吾輩の処へ議論を吹っかけに来る江戸ッ子の若造わかぞうで、友吉とも心安い、来島くるしまという柔道家だったが、これも猿股一つになって、真黒な腕に浮袋を抱え込んでいた。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
丁度来島くるしま海峡で日が暮れるので、暑さ知らずの涼風すずかぜに吹かれながら、瀬戸内の最も島の多く美くしい部分を日のうちに見られるから、夏の雲仙行うんぜんゆきとしては郵船に越すものはない。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
瀬戸内せとうちには、村上、来島くるしま一族の水軍も味方にひかえ、大坂の本願寺衆とはかたく結び、摂津せっつそのほか所在の内応も少なくない。なんで元就もとなり公以来の固い地盤じばんゆるぎでもするものか。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから元就はかねてから、伊予の村上、来島くるしま能島のじま等の水軍の援助を頼んでおいた。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
来島くるしま海峡が難所と共に頗る美景な所だ。潮の落差が滝津瀬のやうな流れに逆行して船は進んで行く。砲台のある松で覆はれた島には寺の塔や神社の赤い鳥居などが可愛らしく隠見してる。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
「十六日。晴。月給金二両受取。」一戸の記に拠れば、是日来島くるしま頼三の隊が千代岡ちよがをかを攻撃し、大鳥圭介等退いて五稜廓に入つた。官軍の参謀黒田清隆きよたかは海律全書を受けて、酒五樽を武揚に贈つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)