本村町ほんむらちょう)” の例文
私は四谷見附よつやみつけを出てから迂曲うきょくした外濠のつつみの、丁度その曲角まがりかどになっている本村町ほんむらちょうの坂上に立って、次第に地勢の低くなり行くにつれ
大正二年には保が七月十二日に麻布あざぶ西町にしまち十五番地に、八月二十八日に同区本村町ほんむらちょう八番地に移った。三年には九月九日に今の牛込船河原町ふながわらちょうの家に移った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
買いたいものが何でもぶらさがっている。私は桃割れの髪をかしげて電車のガラス窓で直した。本村町ほんむらちょうで降りると、邸町になった路地の奥にそのうちがあった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
市ヶ谷の堀端へ出る横町は人目に立つので、二人は路地から路地を抜けて士官学校の門前に比丘尼坂びくにざかを上って本村町ほんむらちょうの堀端を四谷見附の方へ歩いた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
狼狽ろうばいした振りで本村町ほんむらちょうへ行き、清岡先生に三番町の千代田という家へ行った事を告げると、先生はにわかに不快な顔色をして、いろいろ弁解するのも聴かず
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
麻布本村町ほんむらちょう曹渓寺そうけいじには絶江ぜっこうまつ二本榎高野山にほんえのきこうやさんには独鈷どっこまつと称せられるものがある。そのかたち古き絵に比べ見て同じようなればいずれも昔のままのものであろう。
女給じょきゅう君江きみえは午後三時からその日は銀座通のカッフェーへ出ればよいので、いち本村町ほんむらちょうの貸間からぶらぶら堀端ほりばたを歩み見附外みつけそとから乗った乗合自動車を日比谷ひびやで下りた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
本村町ほんむらちょう堀端ほりばたから左へ曲って、小さな住宅ばかり立ちつづく薄暗い横町よこちょうをあちこちと曲って行くうち、重吉も一、二度来たことがあるばかりなので、その時目じるしにして置いた郵便箱を見失うと
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)