書綴かきつづ)” の例文
どうかその心持をと思って物語ぶりに書綴かきつづって見ましたが、元より小説などいうべきものではありません。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
鏡に照して白髪に驚くさまは仏蘭西フランスの小説家モオパサンが『終局フィニイ』といふ短篇にも書綴かきつづられたり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さて、前章に引続いて、私は深山木幸吉の気の毒な変死の顛末を書綴かきつづらなければならぬ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さりとも知らぬ宮はありの思を運ぶに似たる片便かたたよりも、行くべき方には音づるるを、さてかの人の如何いかに見るらん、書綴かきつづれる吾誠わがまことの千に一つも通ずる事あらば、掛けても願へる一筋ひとすぢいとぐちともなりなんと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そもそも小説家のおのれが身の上にかかはる事どもそのままに書綴かきつづりて一篇の物語となすこと西洋にては十九世紀のはじめかたよりようやく世に行はれ、ロマンペルソネルなどととなへられて今にすたれず。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)