さらさ)” の例文
疊屋の方こそ、黒々と塗つて、大した不體裁もありませんが、此方の方は見る蔭もなく荒れて、支への柱は所々ゆがんだまゝ、さらされきつた板は、灰色に腐食ふしよくして、所々に節穴さへ開いて居ります。
そこには最早貝殻の屋根もなければ漁網の高く夕日にさらされた漁村もなかつた。ところどころに点綴せられる人家すらもなかつた。さびしい、さびしい、北海道にでも行つたやうな荒凉とした路である。
伊良湖岬 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
が、寺は其反対に荒れ果てて、門は左程さほどでもなかったが、突当りの本堂も、其側そのそば庫裏くりも、多年の風雨ふううさらされて、処々壁が落ち、下地したじの骨があらわれ、屋根には名も知れぬ草が生えて、ひどさびれていた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)