暑熱しょねつ)” の例文
その風は裳裾もすそたもとひるがえし、甲板の日蔽ひおいをあおち、人語を吹き飛ばして少しも暑熱しょねつを感じささないのであるが、それでもはだえに何となく暖かい。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ところで、極彩色の孔雀くじゃくがきらきらと尾羽おばまるくひろげた夏の暑熱しょねつと光線とは、この旅にある父と子とをすくなからず喜ばせた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
自転車も、朝はよいけれど、焼けつくような、暑熱しょねつのてりかえす道を、背中に夕陽ゆうひをうけてもどってくるときのつらさは、ときに呼吸いきもとまるかと思うこともある。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
蚊やり……と世間さまは暑熱しょねつと闘うに忙しいのだが、この長庵の宅と来たら、これはまた恐ろしく涼しい限りで、家具と名のつくものはおろか、医者の道具らしい物も何一つもなく
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私たちは城を降りると、再び暑熱しょねつと外光の中の点景人物となった。ひらひらと、しきりに白い扇が羽ばたき出した。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)