時々じゞ)” の例文
無政府主義といふ思想、無政府黨といふ結社の在る事、及び其黨員が時々じゞ兇暴なる行爲を敢てする事は、書籍に依り、新聞に依つて早くから我々も知つてゐた。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
阿部伊勢守正弘は三四月のかう病に罹り、五月以後には時々じゞ登城せぬ日があり、じゆん五月九日より竜口たつのくち用邸に引き籠り、六月十七日午下刻に瞑した。享年三十九歳である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いわく、丁晋公臨終前半月、すでくらはず、ただ香をいて危坐きざし、黙して仏経をじゆす、沈香の煎湯せんたうを以て時々じゞ少許せうきよあふる、神識乱れず、衣冠を正し、奄然えんぜんとして化し去ると。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
時々じゞ別に小口預をなしし事あるのみにて、最初に預けし元金もときんをば曾つて引き出したることなし。然るに変事ありし三日前に、夫人自身にて商会に来り、四千フランを引き出だしたり。
それは人の或は毒を置かむことをおそれたからである。たま/\忠行は餅菓子を製することを善くしたので、或日その製する所を家康に献じた。家康は喜びくらつて、此より時々じゞ忠行をして製せしめた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)