斎戒さいかい)” の例文
旧字:齋戒
自分はその一刹那から再び怪異あやかしに憑かれたのであった。彼はこれから一七日いちしちにちの間、斎戒さいかいして妖邪の気を払わなければならないと思った。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一見を求めんとして得べからず、再び十日じゅうじつ斎戒さいかい薫沐くんもくして、特に尊顔を拝すべし。乞う、寛覧かんらんを垂れよ。鑒察かんさつあらば幸甚。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明神は女体におわす——爺さんがいうのであるが——それへ、詣ずるのは、石段の上の拝殿までだが、そこへくだけでさえ、清浄しょうじょう斎戒さいかいがなければならぬ。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この新嘗にいなめの神を送り申したこと、それが一つ一つの家門ごとに、それぞれ因縁いんねんの深い神なりと信じられたこと、ことに厳粛なる斎戒さいかいと、それに引き続いた自由なる歓楽とが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
同じ年、斉の陳恒ちんこうがその君をしいした。孔子は斎戒さいかいすること三日の後、哀公の前に出て、義のために斉をたんことを請うた。請うこと三度。斉の強さを恐れた哀公は聴こうとしない。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
持斎堂というのはこの辺の僧侶や俗人が八斎戒さいかいを保つその上に一日間全く肉を喰わぬとか、あるいは人と少しも物を言わぬというぎょうをするためにここに立てられて居る堂であります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
先師が慎んだ上にも慎まれたのは、斎戒さいかいと、戦争と、病気の場合であった。
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
終焉しゅうえん斎戒さいかい果てゝ
上等の僧侶は一日として肉がなくては決して喰うことが出来ない。どうかして斎戒さいかいを保って肉食にくじきをやめるような事があるとやかましい事で、せたとか死にそうになったとか言うてわいわい騒ぐです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)