散所民さんじょみん)” の例文
どちらも破衣素跣足はいすはだしの親と子である。瞬時、この尺土の上の父子像には、ただの土民や散所民さんじょみんとも何の違いもない血の慟哭どうこくが見えていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天王寺を中心とする荒陵あらばか聚落じゅらくには、こまかい庶民の屋根が、低地低地に密集している。そしてここにも散所民さんじょみんの生態がそっくりあった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日野俊基をかりて、河内や石川盆地の散所民さんじょみんなどを書いたのも、正成を生んだ郷土の特色とか社会条件なども、一応、描いておく必要からであった。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どんな諜者いぬも、ここへはまぎれ込めません。分れば散所民さんじょみんの袋だたきにあい、骨まで消されてしまいますから」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほどなく、散所民さんじょみんのわめき声だの、赤子の泣き声。そして、いちの騒音も陽と共に高くなり、やがて型どおりな毎日の生態と砂塵が附近一帯をたちめてくる。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまたま家人のうわさにでものぼれば「……悪四郎か。そうだなあ。たぶんは、よくて野伏のぶせりの頭にでもなっているか。さもなくば、散所民さんじょみんの中にでも落ちていることか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらには野伏から土地の散所民さんじょみんまでが、こぞって寄手方の背へ、けわしい形相をしめしたなどが、鎌倉勢には腹背ふくはいおびえとなって、さしも大軍とみえた金剛山麓のありのようなものも
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「石川あたりの散所民さんじょみんたちだそうでございます」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古市や道明寺あたりの散所民さんじょみんらの反感だった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
散所民さんじょみんの多い所だな」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)