故里くに)” の例文
その顔、その声——カックスレイの故里くにのブライトンでエンマ・ダッシュが夢の間も忘れていないキャプテン・マクドオナルドその人なのだ。
消えた花婿 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
仙は故里くにの石の巻で松前通いに乗ってたことがあると、いつか自身でしゃべっていたのを、ふっと、思い出したんで——。
『そいつも気がきかないです。何とかして巴里で一旗上げたいと思うんですが——故里くににあおふくろもいますし——。』
差入のことや家のことや色々なことを云った後で、弟は片方の眼だけを何べんもパチ/\させながら、「故里くにの方はとても吹雪ふぶいているんだって。」
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
老けたまふ父の言葉に知らされてわが知る故里くには遠くなりたり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
引く。君は一日じゅう台所に坐って、くよくよ故里くにのことを
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
安重根 (しんみりと)やはり故里くにの人間でねえ、僕んところから三里ほどしか離れてないんだが、今度休暇を取って、ちょっと帰国かえるんだそうだ。
「お故里くにの方々がごらんなすったら、どんなにかお嘆きなさることでございましょう」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
故里くにを出たきり補助するどころではないから、さぞ困っているだろうと思うよ。
そもこの左膳の万難千苦の根因はと言えば相馬大膳亮様の慾炎よくえん——厳命にあることだから、ここはどうしても故里くにおもてから屈強の剣士数十名の来援をうて、一つには五人組にそなえ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
故里くにのほうに都合がついたら、趙君に面倒を見てもらって、帰りに、ハルビンまで家族うちのやつらを伴れて来てもらうつもりだ。旅券の関係で、ウラジオへ呼ぶということは厄介だからねえ。