わか)” の例文
随って椿岳の後継あとつぎは二軒にわかれ、正腹は淡島姓を継ぎ、庶出は小林姓を名乗ったが、二軒は今では関係が絶えて小林の跡は盛岡に住んでるそうだ。
椰子の樹はかうして其心底を示すのである。椰子の下葉は、精一杯に開いて、項垂れがちである、中の葉は前後左右、出來得るかぎり、わかれてゐる。
椰子の樹 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
わが漢室のわかれた者のすえである——玄徳はちん外叔がいしゅくにあたるものぞと、勿体ない仰せをこうむりました。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大川の水は、洪水の時、森の根を洗ってひたるとみえ、御堂のすぐ側まで、平常でも、わかれ水がひたひたと寄せていた。御堂を囲む木は皆、千年も年経ったような喬木であった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
極熱の日の、長い眞晝時、椰子はあまりの幸福に恍惚として、その葉の簇を開き別けつつ、四方に離れわかれる所、幼兒の頭蓋をさながらに大きな青い頭のやうに、椰子の實は列んで載つてゐる。
椰子の樹 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
物がたりは、ここからわかれて、春日新九郎の身に移ることとなる。が、その夜その一つの船から奔流の底へ巻き込まれた彼は、既に、しっかりと、生命を意識している人ではなかった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)