撫廻なでまわ)” の例文
あわれ乞食僧はとどめを刺されて、「痛し。」と身体からだ反返そりかえり、よだれをなすりて逸物いちもつ撫廻なでまわし撫廻し、ほうほうのていにて遁出にげいだしつ。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へへへへへへへへ。」といって皺の寄った顔と凹んだ眼のあたりを枯れた血の気のない手で撫廻なでまわした。
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
亡霊の消えたのは其処そこである、——博士はしゃがみこんで、根気よく二十分あまりも煖炉の周囲を撫廻なでまわしていたが、やがて指先が、煖炉棚マントルピースの一角に触ったと思うと、火床が音もなく滑って
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
宗匠は又坊主頭を蘆の穂先で撫廻なでまわされて。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)