撃柝げきたく)” の例文
館の中での乱痴気さわぎも、ここらあたりへまでは聞こえて来ず、厩舎で馬が地を蹴る音や、非常をいましめる巡視みまわりの卒の、撃柝げきたくの音ばかりが聞こえて来た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
撃柝げきたく一声、囃子はやしは鳴りをしずむるとき、口上はかれがいわゆる不弁舌なる弁をふるいて前口上をわれば、たちまち起こる緩絃かんげん朗笛のせつみて、静々歩み出でたるは、当座の太夫元滝の白糸
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜が更けて夜番の撃柝げきたくの音がきこえ出すと、堯は陰鬱な心の底でつぶやいた。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
やがて彼方此方あなたこなたの陣屋から炊事の煙りが立ち昇り、馬のいななき犬の吠え声または撃柝げきたくの凛々しい音が、ひとしきり賑かに聞こえたが、それも次第に静まり返り
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
聞こえるものは馬のいななき、武器の触れ合って立てる音、怒声、制止声、撃柝げきたくの音。輝くものは抜き身の刃。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この前庭には人気がなく、遠くで鳴らしている撃柝げきたくの音が、間遠くに聞こえるばかりであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)