掻廻かきま)” の例文
店の大半、表へまで芋俵が積まれ、親父おやじさんは三つ並べた四斗樽のあきで、ゴロゴロゴロゴロ、泥水の中の薩摩芋さつまいもを棒で掻廻かきまわした。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
既にその時もあれじゃ、植木屋の庭へこの藁草履を入れて掻廻かきまわすと、果せるかな、螇蚸ばった蟷螂かまきり
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
穏和おだやかな声した親仁おやじは、笹葉にかくれて、がけへ半ばしゃがんだが、黒の石持こくもちの羽織に、びらしゃらばかまで、つり革の頑丈に太い、提革鞄さげかばんはすにかけて、柄のない錆小刀さびこがたなで、松の根を掻廻かきまわしていた。